2016.09.22
生涯の友、音楽とオーディオへの飽くなき希求。そして、音楽に触発された自らの人生。剣豪作家が遺した、斬れ味鋭い音楽エッセイ。〈解説〉新保祐司
ハイデルベルクで、ウィーク・デーの午後、ひっそりした教会へ入ってみたことがある。
ステンドグラスや殉教壁画の崇厳感とは別に、私の心をとらえたのは、宏壮な教会内のいたるところに、こっそり蔵されていたスピーカー・キャビネットだ。大きさにしてスコッチ・ウィスキー一壜を収めた箱くらいだが、それが何十となく教会の天井から下がり、或は円柱のわきに装備されていた。・・・・・・・(あとがきより)
西方の音 五味康祐著 中央公論新社刊 定価900円+税