2018.08.28
昭和21年開店した『くすみ書房』は札幌の市民に愛されていた町の本屋さん。順調に歩んでいた店も1973年のオイルショック以降、地下鉄の開業と新駅の開業、紀伊國屋書店の駅ビル出店と撤退、コンビニエンスストアの増加など世間の波に翻弄され、家族の葬式の香典までも店の支払いに廻さざるをえない状況に一度は閉店を決意するも、家族の死のせいで店を閉めたと思われたくない、不甲斐ない自分のせいなのに。今店を閉めるわけにはいかない。
売れ筋の本しか置かないから良書がどんどん消えていくと始めた「なぜだ!?売れない文庫フェア」、「店での朗読会」の開催、オヤジのおせっかいと言いつつ中学生のために選書した「中学生はこれを読め!」、「ソクラテスのカフェ」オープン、「高校生はこれを読め!」等々次々と誰もやっていない、面白いフェアを開催し北海道はもとより全国的に『くすみ書房』は名を知られるようになっていったが赤字経営は続き、2015年6月ついに閉店に追い込まれる。
閉店後も本屋への情熱を持ち続けた著者は中高生がそして大人たちが夢中になれる書店『THE BOOKs green』を構想するも発病、2017年8月28日逝去。
「本にはすべての答えがある」とわたしは信じている。だから、あれ読めこれ読めとうるさく言うのだ。辛いとき、迷ったとき、そしてうれしいとき、高校生諸君にはいつもそばに本のある人生を歩んでもらいたい。
奇跡の本屋をつくりたい 久住邦春著 ミシマ社刊 定価1,500円+税