2016.12.21
本書は、フランスの世界的な野外パフォーマンス集団、ロワイヤル・ド・リュクスの主宰者クールクーが書いた、巨人の女の子と象のタイムマシンに乗ったスルタン一行が、突然、あなたの街に現れるまでのお話です。
1905年のインドから始まる冒険は、いくつもの大陸を横切り、海の底へ、さらに は月へとあなたを連れて行きます。冒険のたどりつく先は、フランスのナント、あの空想科学小説家、ジュール・ヴェルヌの生まれた街です。
そして、ある朝、突然、巨大な少女が街に降りてきます。そして、スルタン一行を乗せた、ビルの4階にも達する巨大な象のタイムマシンの登場。その瞬間から、街の空気は一変し、見慣れた街は、賛嘆と歓声の渦巻く別世界になりました。ロワイヤル・ド・リュクスの代表演目『スルタンの象と少女』の始まりです。数日間にわたって繰り広げられる、この壮大なスペクタル・パフォーマンスの全貌を見たひとは誰もいません。それでも街の住民は、街が変わったこと、自分が変わったことを肌で感じています。そして、少女も象も、忘れることのできない記憶となって語り継がれていくのです。
見慣れた街を見知らぬ世界に変えるロワイヤル・ド・リュクス。
そして、見知らぬ世界は、時空を旅する冒険の世界につながっているのです。
著者紹介
ジャン=リュック・クールクー(Jean-Luc Courcoult)は、幼いころから、ジュール・ヴェルヌの空想科学小説やジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』を耽読していました。1979年より、ロワイヤル・ド・リュクスを主宰し、さまざまなインスタレーションやスペクタクルを企画・制作。フランスをはじめヨーロッパ各地、南米、中国、オセアニア、アジア諸国など、30年間で50カ国以上で公演してきました。無料公開を信条とするロワイヤル・ド・リュクスの公演を実現するために、市町村などの自治体や国が協力しています。町の人々や風景までも、そのままパフォーマンスの一部に見立ててしまうようなロワイヤル・ド・リュクスの壮大な世界観は、クールクーの描き出す魅惑的な物語とともに、 大人や子どもを問わず、多くの人々を魅了し、夢中にさせ、虜にしています。
クールクーは、あるインタビューのなかで、「確かに僕は『68年の子供』だけれども──でも、68年5月のとき、僕はたったの12歳だった」と、フランス5月革命 との微妙な距離感に言及しています。また、野外での無料公開については、「野外には詩的な偶然があります」、「お金のないリオの少年がショーを見て笑ってる、それを見ると僕は幸福なんです」と答えています。
イラストレーター紹介
カンタン・フォコンプレ(Quentin Faucompre)は、ジュール・ヴェルヌの小説とサイエンス・フィクションのあいだで、夢のような景色とキャラクターを、すこ し風変わりでリアルな想像をしながら、このお話に絵をつけました。まるで、遠くまで見ることができる巨人の少女の目を通して、すべてを見たかのようです。 すべてがふさわしい場所におさまっているのに、まるでちがっています! この本の絵を描くにあたって、カンタンは『プチ・ジュルナル』紙のおおげさなリトグラフと、少年のころ、とても影響を受けたロワイヤル・ド・リュクスの世界からインスピレーションを得ました。そのころからロワイヤル・ド・リュクスのパフォーマンスは、何度見ても飽きることのない、想像力豊かな世界でした。そういうわけで『スルタンの象と少女』は、カンタンにとってロワイヤル・ド・リュクスの世界に敬意をあらわし、絵によってパフォーマンスの新しい味わい方を提案するよい機会となりました。
1979年生まれ。ナント在住。2002年にナント市美術大学でDNSEP(修士号に相 当)を取得。2003年から、ロサンジェルス、アムステルダム、パリ、レンヌなど、フランスだけでなく、海外で様々な展覧会に参加。また、『狩り、釣り、自然と伝統』などの単行本も出版。芸術誌をはじめ多くの雑誌にも作品を掲載しています。第6回(2007年度)ナント市造形芸術賞受賞。
ロワイヤル・ド・リュクス(Royal de Luxe)
1979年にジャン=リュック・クールクー(Jean-Luc Courcoult)が南仏・エクサンプロヴァンスに設立した野外パフォーマンス集団。創立以来、フランス国内は もちろん、世界各地(フランス、ベルギー、イギリス、アイスランド、チリ、 オーストラリア、ドイツなど)でインスタレーションや『空から落ちてきた巨人』『キリンを狩る者たち』『スルタンの象と少女』など壮大なスペクタル・パフォーマンスを、無料公開を信条として公演しています。