2016.01.30
1987年,ヴェトナム戦争が終わって12年が過ぎた年の初夏に,本書の初版は刊行されました.ヴェトナム戦争再評価の機運が高まるいっぽうで,いまだ戦場体験者の生々しい記憶が残り,「ヴェトナム」が極めてデリケートな「政治的難題」となりつつあったアメリカ社会に若き研究者であった著者が飛び込んで,様々な表象を分析しながらヴェトナム戦争を,さらには現代アメリカを,そこに繰り広げられる政治と社会と文化儀礼のありようを鮮やかに描き出した本書は,刊行されるや大きな反響を呼びました.
その後1993年には「ちくま学芸文庫」として,また2000年には三省堂書店から「新版」として刊行されていた本書を,ヴェトナム戦争終結40年の節目に当たるこのたび,岩波現代文庫として送り出します.アメリカ社会を大きく揺るがし,今もそのあり方を規定しているヴェトナム戦争の「歴史化」をめぐる議論は,70年前の戦争がいまだ歴史化の過程にある現在の日本にとっても示唆に富んでいることでしょう.
ジャングル・クルーズにうってつけの日
ヴェトナム戦争の文化とイメージ
生井英考著 岩波書店刊 定価1,720円+税