2016.12.18
現代美術家にして回文作家である著者の二つの顔を綜合した初の驚異の作品集。近年、東京都現代美術館、国立新美術館など相次ぐ展覧会で注視されており、都築響一など刊行を待ち望む声が多い。
美術とは物質を根幹まで突き詰めることであり、物質の極みとは言葉の粒子であった。
言葉を消すことは非在する言葉を書くことにほかならず、言葉はくりかえし闇となり光となる。
時間全体が混ぜあわされて、鈴の音になり全方向へとふりそそぐ。
生まれてすぐ見たものは水滴にみちた世界であり、帰還の前に予感するのは、虚をみたす無限の明滅だった。 (「片糸の日々」より)
ひかり埃のきみ 美術と回文 福田尚代著 平凡社刊 定価2,800円+税
福田尚代
1967年、埼玉県浦和市生まれ、1990年、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、1992年、同大学大学院美術研究科油画専攻修了。主な展覧会に「Chaosmos '03 Mindscape」佐倉市美術館(2003年)、「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」国立新美術館(2010年)、「福田尚代 慈雨 百合 粒子」小出由紀子事務所(2013年)、「秘密の湖」ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(2013年)、「MOT アニュアル2014 フラグメント―未完のはじまり」東京都現代美術館(2014年)、「開館20周年記念MOTコレクション特別企画コンタクツ」東京都現代美術館(2014-15年)、「Reflection:返礼―榎倉康二へ」秋山画廊、スペース23℃、ほか(2015年)、「福田尚代―言葉の在り処、その存在」うらわ美術館(2016年)、など。美術作品集に『福田尚代作品集2001―2013 慈雨百合粒子』(小出由紀子事務所、2014年)。