2016.12.17
特攻隊長として赴任した加計呂麻島での出会い、不安と嫉妬で苦しみ心を病んでいく妻、奄美へ移住し重ねていく日々・・・・・。
純文学の極北と称された島尾敏雄の諸作品から、妻ミホの姿を浮かび上がらせるオリジナル編集。
極限状態にありながらも、静かで時にユーモラスな表現の根底には、妻への新鮮な驚きと深い愛情がある。 <編・解説>梯久美子
妻への祈り島尾敏雄作品集 中央公論新社刊 定価1,100円+税
幼い日、夜ごと、子守歌のように、母がきかせてくれた奄美の昔話。
南の離れ島の暮しや風物。慕わしい父と母のこと―――――記憶の奥に刻まれた幼時の思い出と特攻隊長として島に駐屯した夫島尾敏雄との出会いなどを、ひたむきな眼差しで心のままに綴る。第十五回田村俊子賞受賞作。 <解説>梯久美子
海辺の生と死 島尾ミホ著 中央公論新社刊 定価648円+税
島尾敏雄
一九一七(大正六)年、横浜に生まれる。四〇(昭和十五)年九州帝国大学法文学部経済科に入学、のち文科に再入学。四三年私家版『幼年記』を刊行。同年九月末繰り上げ卒業、十月海軍予備学生を志願、特攻隊長として加計呂麻基地で敗戦を迎える。六一年「死の棘」で芸術選奨、七七年『日の移ろい』で谷崎潤一郎賞、七八年『死の棘』で読売文学賞・新潮日本文学大賞、八五年『魚雷艇学生』で野間文芸賞を受賞。ほか著書多数。一九八六(昭和六十一)年没。
島尾ミホ
一九一九(大正八)年鹿児島県に生まれる。奄美群島の加計呂麻島で幼年期を過ごし、東京の日出高等女学校を卒業する。戦時中、加計呂麻島に海軍震洋特別攻撃隊の隊長として駐屯した島尾敏雄と出会い、四六年に結婚。豊かな自然と民俗に彩られた南島での少女時代の記憶を語った『海辺の生と死』により七五年に南日本文学賞、田村俊子賞を受賞した。二〇〇七(平成十九)年没。
梯久美子
ノンフィクション作家。一九六一年、熊本県に生まれる。北海道大学文学部卒業。編集者を経て文筆家に。『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』(新潮文庫)で第三七回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。他に『硫黄島 栗林中将の最後』(文春文庫)、『百年の手紙 日本人が遺したことば』(岩波新書)、『廃線紀行 もうひとつの鉄道旅』(中公新書)、『愛の顛末 純愛とスキャンダルの文学史』(文藝春秋)、『狂うひと「死の棘」の妻、島尾ミホ』(新潮社)など著書多数。