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一月と六月
2015.11.12
岸辺のヤーピ 梨木香歩 作 /小沢さかえ 画 福音館書店刊 1,600円+税
わたしは、この間のようにゆっくり、彼の前にミルクを置きました。彼の全身に、「よろこび」が走ったのを、わたしは感じました。 わたしは彼がそのままそれをつかんで去っていくのだろうとおもっていました。けれど、彼はなんと、わたしに深々とお辞儀をし、そして、しばらく下を向いていましたが、思い切って、という感じで声を発しました。 「お礼をしたいんです」 コオロギがおそるおそる試し鳴きをしているかのような声でした。 ―本文より
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