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水たまりの月

2017.09.08

水たまりの月

午前6時道路脇のデジタル温度計は21度を指している。
夏の熱気はいまだ地面の底に溜っているようで、靴の底に
温もりが伝わってくるが、朝晩はずいぶん過ごし易くなった。
歩道には夕べからの雨が水たまりを作って明け方の月を映している。

山際淳司『江夏の21球』(角川新書)が新しく新書版で出たので、枕元に
おいて、寝酒代わりに読み始める。『Number』で読んだのが最初だったと思うけれど、選手間の駆け引きや、ベンチと選手の思惑の食い違いが丹念につづられていく。読んでいくうちに江夏に声を掛けた衣笠に共感してしまう自分がいる、ベンチが悪いわけでないが、違うような気がする。
眠るつもりが、つい読みふけってしまい寝不足になる。
『江夏の21球』が世に出た頃、松村友視『私、プロレスの味方です』を読んで、あっこういう見方もあるのかと妙に納得したのを思い出した。
スポーツに関する文章の新しい書き手たちが新しいスタイルでスポーツを描き出した頃、その中でも『江夏の21球』は重要な転換点じゃなかったのかと思いながら散歩を終えた。

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